ザーサイ置き場


困惑、焦燥

『何ボーっとしてるんだ!横に転がれ!』

 コマドリの叫び声でハッとなり、俺は無我夢中で指示に従った。

警察がさっきまで俺のいた場所に飛び込む音がする。

『まだだ!短剣を顔の左横にかざして衝撃に備えろ!』

慌てて短剣を出したが、焦りのせいでしっかりと持つことが出来なかった。そのせいで短剣はいともたやすく弾き飛ばされてしまう。


 腕を生ぬるい物が伝う感覚があった。

「うあぁあ......あっあっ......切れてないよな?切れてないよな?」

『落ち着け、それは警察のだ』

「クククッ」
警察が笑っている。ゾクリと悪寒が走った。

『あの警察、狂ってやがる』

「切れてない......?切れてないんだな?」

『ダァ!もううっせえなぁ!切れてないって言ってるだろ!』

「そうか、よかった」

ようやく胸を撫で下ろす。


「切れてないわけないだろ?現実逃避しているのか?」
 警察が声を僅かに震わせて言った。

『早くずらかるぞ』

「うるせぇ」

立ち上がり、走り出す。外で待っていた皆が心配の声をかけてくれる。

大丈夫、逃げれる。

背後の警察が爪を噛む音が嫌に響いた。


 彼との抗争はこの後、数度にわたって行われていくのだ。